コラム

「デジタルトランスフォーメーション」とは

「デジタルトランスフォーメーション(DX:Digital Transformation)」という言葉を耳にしたことはありますか。この言葉は、2004年にスウェーデンのエリック・ストルターマン教授が提唱した「進化し続けるITテクノロジーが人々の生活を豊かにする」という概念のことを指します。成長や企業競争力を維持するためにも、今後、欠かせないワードとして、多くの注目を集めています。

「デジタルトランスフォーメーション」について

「デジタルトランスフォーメーション」とは、どのような意味なのでしょうか。ウィキペディアで検索したところ次のように紹介されています。
デジタルトランスフォーメーション(Digital transformation; DX)とは、「ITの浸透が、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる」という概念である。2004年にスウェーデンのウメオ大学のエリック・ストルターマン教授が提唱したとされる。ビジネス用語としては定義・解釈が多義的ではあるものの、おおむね「企業がテクノロジーを利用して事業の業績や対象範囲を根底から変化させる」という意味合いで用いられる。
参照:ウィキペディア「デジタルトランスフォーメーション」

つまり、”ITを企業や人に浸透させることで、私たちの暮らしをより良くしていこう”という意味を表します。さらに簡潔に説明すると、”企業のIT化を推進しよう”という動きのことです。

情報技術の発達により、私たちはより簡単に情報を得ることが可能となりました。そのため、企業に求められるサービスも劇的に変化し、商品に伴う体験や周辺の実現サービスに焦点が当てられるようになりました。
これらの現象により企業は、PCの導入による業務効率化やペーパーレスによるコスト削減など守りのビジネスから脱却をし、モバイル、ソーシャル、ビッグデータ、クラウドなどの新しいデジタル技術を活用した攻めのビジネスへとシフトチェンジしないと生き残ることが難しくなり、さらに、新たな価値を生み出していくことが求められています。

なぜ「デジタルトランスフォーメーション」が必要なのか

経済産業省は2018年9月に企業のデジタル改革に関する報告書「DXレポート~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~」を発表しました。その中で特に注目したいのが、「2025年の崖」というワードです。今まで語られてきた明るい未来とは違い、“このまま何もしなければ日本経済は崖から落ちる”といった危機感に満ちた内容の報告書でした。

「2025年の崖」とは
2020年にはWindows7のサポートが終了し、2025年には、ビジネス向けソフトウェアの開発を手掛ける大手ソフトウェア会社SAPのERPもサポートを終了します。
その背景には、既存のITシステムの老朽化や複雑化などによりシステムがブラックボックス化し、データの利活用・連携が限定的になっていることや、システム管理者の高齢化・退職などにより国内のIT人材が40万人規模で不足していること、そして、既存システムの維持・保守にコストが増大し、新たなデジタル技術を活用するIT投資にリソースを振り向けることができないなどの理由が挙げられています。
このままでは2025年~2030年の間で最大12兆円の経済損失が生じる可能性があると指摘しており、これらの課題の深刻さを「2025年の崖」というワードで表しています。
参照:デジタルトランスフォーメーションレポート~IT システム「2025 年の崖」の克服と DX の本格的な展開~/経済産業省

「デジタルトランスフォーメーション」に取り組む意義

日本マイクロソフト株式会社とIDC Asia/Pacificが、アジア 15 ヵ国、地域の 1,560 人のビジネス意思決定者を対象とした「デジタルトランスフォーメーション」の経済効果調査を行いました。その結果、「デジタルトランスフォーメーション」を推進している企業は、利益や生産性の向上、新商品やサービスの恩恵を受けているという結果が見えてきました。

参照:アジアにおけるデジタルトランスフォーメーションの経済効果調査Commissioned by Microsoft/IDC Japanリサーチバイスプレジデント中村 智明

「デジタルトランスフォーメーション」がもたらす影響とは

同じく日本マイクロソフト株式会社とIDC Asia/Pacificの経済効果調査の結果によると「デジタルトランスフォーメーション」は、今後の日本経済に大きく貢献することが予測されています。

・2021年までに日本のGDP(国内総生産)の約50%をデジタル製品やデジタルサービスが占める
・2021年までに「デジタルトランスフォーメーション」は、日本のGDPを約11兆円、GDPのCAGR(年平均成長率)を0.4%増加する
・「デジタルトランスフォーメーション」は利益率向上、コスト削減、生産性向上、生産・運用時間の短縮、顧客獲得時間の短縮を実現し、3年間で約80%向上する見通し
・「デジタルトランスフォーメーション」の「リーディングカンパニー」は、フォロワーと比較して2倍の恩恵を享受
・「デジタルトランスフォーメーション」は最終的によりスマートで安全な都市とヘルスケアの向上を実現し、国民に利益をもたらす

参照:2021 年までに、デジタルトランスフォーメーションが日本の GDP に約 11 兆円貢献する見通し/Microsoft Japan News Center

この調査では、モバイル、IoTおよびAIを活用した製品やサービスが、2021年までに6倍以上になると予測されています。このことから、現在、私たちの生活は大きな変革を遂げようとしていることが分かります。

成功事例は“Amazon.com”

「デジタルトランスフォーメーション」をいち早く取り入れ、成功している企業と言えば、Webサービス会社Amazon.comではないでしょうか。
インターネット上で物を販売することに大きな可能性を感じていたAmazon.comの共同創設者ジェフ・ベゾス氏は、Windows 95が開発される前の年、1994年にAmazonを設立。昔ながらの書籍販売というビジネスを、インターネット経由で販売することに成功しました。そして今もなお時代の変化に合わせ改革を続け、圧倒的な支持を獲得し、シェアを拡大し続けています。
また、「デジタルトランスフォーメーション」を説明する際によく例として挙げられるのが、アメリカ合衆国の企業であるUber Technologies(ウーバー・テクノロジーズ)が運営するUBERです。UBERとは、一般人が自分の空き時間と自家用車を使って他人を運ぶ、自動車配車プラットフォームのことで、スマートフォンのアプリを起動すると位置情報を利用して、UBERに登録している近くのドライバーに通知が届き、自動で配車手配を行ってくれます。支払いは事前に登録したクレジットカードから引き落とされるため、乗客は目的地に到着後、財布を取り出すことなく車を後にすることができます。また、配車サービスのリリースから7年後の2016年には、現在日本でも普及し始めている、フードデリバリーサービスUber Eatsを開始し、2017年の予約売上は370憶ドルにも達していると言われています。
このようにUberは移動に注目をし、今まで人手を使わないとできなかった”配車依頼を受け取り、ドライバーに指示をだす”というプロセスをデジタル化し効率化することに成功。その結果、利用者はこれまでよりも気軽に配車でき、また、ドライバーやタクシー会社はマイカーを活用したタクシーサービスを提供することが可能となり、既存のサービスの在り方を大きく変えました。
※日本ではUber本来のサービスは行っておりません。

「デジタルトランスフォーメーション」に注力している企業

2017年8月に電通デジタルがForrester Consulting社に委託し、実施された、ソートリーダシップ報告書「日本におけるデジタルトランスフォーメーションおよびデジタルマーケティングに関する実態調査:2017年度」により、68%の企業が組織改革の重要性を認識している一方で、約半数が未着手であることが分かりました。
実際にデジタル改革に着手している企業では、顧客体験やビジネスそのもののイノベーションを促し、マーケティング・テクノロジーの両面からアプローチや組織文化そのものの見直しを重要と考え取り組んでいます。
参照:日本のデジタルトランスフォーメーションおよびデジタルマーケティングに関する実態調査(2017年度)/株式会社電通デジタル

ソフトバンク株式会社

ソフトバンクは元々通信事業者ですが、現在では、AI領域やビッグデータ解析領域、そして、ロボティクス領域など、法人向け次世代サービスの開発や提供をいち早く市場に投入し、さまざまな領域で「デジタルトランスフォーメーション」を促しています。
参照:https://www.softbank.jp/

NTTドコモ

IoTサービスを海外に向けて展開する企業のニーズに応えるために、グローバル回線・オペレーション・コンサルティングをワンストップで提供するマネージドサービス「Globiot(グロビオ)」をリリース。各企業がよりIoTアプリケーションの開発に集中できる環境を提供しています。
参照:https://www.nttdocomo.co.jp/

日本電気株式会社(NEC)

コンピューターや電気通信機器などの製造・販売、インターネット事業などを行う国内最大のコンピューターメーカーNECでは、EUが進めるスマートシティ向け、オープンソースソフトウェアの開発に貢献するほか、社会ソリューション事業に注力しており、AI・IoT技術をはじめとする先進ICTを活用して、利用者から開発者までを巻き込む環境を創り出しています。
参照:https://jpn.nec.com/

KDDI株式会社

通信事業を手掛けるKDDIでは、「お客さま、パートナー様との業界を超えた“共創”による新たなビジネス価値の創出」という考えのもと、変化にも柔軟に対応できるように組織運営のあり方を見直し、商品の企画・開発のプロセスや、商品ラインアップの考え方も変革。
さらに、多様なパートナーシップを展開し、お客さまのご要望や将来提供すべきバリューを見据えながら、パートナーの商品やサービスもラインアップに組み込んでいます。
参照:https://biz.kddi.com/

サイボウズ株式会社

ITの知識がない人でも、簡単に業務アプリが作れるサービス「kintone(キントーン)」を2011年にリリース。中小企業から大手企業まで国内6,000社以上が導入し、今では海外企業からも注目を集めています。2017年には、アプリケーションデリバリー速度とユーザーエクスペリエンスが評価され、ガートナー社から発行された「Magic Quadrant for Enterprise High-Productivity Application Platform as a Service(エンタープライズ高生産性アプリケーションプラットフォーム)」のマジック・クアドラントにおいて、グローバル市場の主要な14ベンダーの1つにも選出されています。
参照:https://topics.cybozu.co.jp/

株式会社ディー・エヌ・エー

DeNAはAIをはじめとした自社の技術力を武器とし、ここ数年でゲームエンタメ事業、オートモーティブ事業、ヘルスケア事業、ソーシャルLIVE事業など、事業領域を広げてきました。
今後、世界市場に向けて新しい取り組みに合わせたシステム基盤の提供を視野に入れ、2018年より3年間かけて、オンプレミスで運用する全てのシステム基盤を全面的にクラウドに移行するプロジェクトを計画しています。
参照:https://dena.com/jp/company/

富士通株式会社

イノベーションを起こすには、学生や個人、ベンチャーなど色々な立場の人が集まれる環境が重要だという考えから、2016年5月に「FUJITSU Knowledge Integration Base PLY(プライ)」を開設。さまざまな業種の顧客の知識と経験を活かし、商品戦略とリソースを最適化することで、従来アプローチができていなかった領域への対応力の強化を目指しています。
また、太陽光で発電・動作するビーコン「FUJITSU IoT Solution Battery-free Beacon PulsarGum」の開発により、電源確保が難しい場所での利用をはじめ、実質メンテナンスフリーにすることでアプリケーションの可能性を広げています。
参照:http://www.fujitsu.com/jp/

三菱UFJフィナンシャル・グループ

現行の金融事業をデジタル化する取り組みや、ブロックチェーン基盤の開発やFintech関連の実証実験など、最新のデジタル技術の取り入れを積極的に行い、金融分野における変革をリードしています。
参照:https://www.mufg.jp/

「デジタルトランスフォーメーション」が上手くいかない理由

一方で「デジタルトランスフォーメーション」に取り組んでいるものの、上手くいかない現状もあります。その理由として、3つ挙げられます。

1. デジタル化の定義が曖昧
実現のためのアプローチは企業によって大きく異なります。そのため自社が属するマーケットの状況やニーズを把握し、考慮しておく必要があるのですが、多くの企業が曖昧なまま導入に踏み切ってしまいます。

2. 人材の不足
第2の原因としては、計画を立てても実行レベルまで届かず、また、プロジェクトを推進できる人材がいないことが挙げられます。「デジタルトランスフォーメーション」を取り組むうえでは定義づけるだけではなく、運用することが重要となります。

3. マーケティングが分断されている
第3の原因としては、マーケティングが分断されており、会社全体で取り組めていないことが挙げられます。一部署に全てを委ねてしまうと、考えられる範囲がどうしても狭まってしまい、結果的に顧客に対して良い体験を提供することが困難となります。

導入に必要な5つのステップ

では、「デジタルトランスフォーメーション」の導入にあたり、どのようなことが必要なのでしょうか。成功へ導く重要なステップを5つご紹介いたします。

ステップ1. デジタル化
最初は、デジタルテクノロジーの導入です。さまざまなツールをデジタル化することで、データの蓄積が可能となります。このとき、今流行のテクノロジーやデジタルビジネスの事例を調べておくことが大切です。広い視野で計画を立てることで、既存の事業プロセスの見直しに繋がり、ビジネス組織全体の検討にも繋がります。

ステップ2. 効率化
ステップ1で蓄積したデータを部門ごとに活用し、業務の効率アップに繋げていきます。ここではどのように運用していくかを考えたうえで、プロジェクトを推進できる人材を集めることが重要です。

ステップ3. 共通化
ステップ1、2で蓄積したデータを他部門でも応用できるような基盤を作る作業です。
先程、成功事例として挙げたUberで例えると、配車サービスで蓄積したデータを応用して、外食宅配サービスUber Eatsを展開しているケースがこの段階にあたります。

ステップ4. 組織化
ステップ3で構築した基礎を活用し、より効率的な運用を行うための組織づくりを行います。
ここでは、プロセス全体を見渡す専任組織を設置し、運用体制を確立させ、業務を明確化した意思決定を行うことが重要です。

ステップ5. 最適化
最後は、これまで蓄積したデータのデジタルテクノロジーを活用し、事業全体にイノベーションを起こしていきます。データから出した案を基に施策を実施し、事業の未来予測を行います。また、全従業員の協力が得られるよう、理解度を向上させておくことが重要です。

株式会社Wizも「デジタルトランスフォーメーション」を推進して参ります

Wizが掲げる企業理念「100年成長する企業作り」を実現するためには、その時代に沿った事業を展開し続ける必要があります。実際に設立から7年目で、3事業から14事業にまで拡大しました。
WizはITの総合商社として、ヒトと企業の課題を解決できるような商品をセレクトし、人々の生活をより良い方向に、そして、企業の業績や生産性を根底から変化させることを目標としています。これからも世の中のIoT・ICT化の流れに沿い、ITインフラを世の中に普及させるべく、ヒトと企業の「デジタルトランスフォーメーション」を推進して参ります。

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